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消えゆくアーケード - 鑑定法人エイ・スクエア/菅原健

 

五年ほど前、私の住む郊外の駅前通り商店街のアーケードが撤去された。歩道の上だけに架けられているタイプだったが、突然の雨でも多少は救われた。アーケードが好きでその商店街へ買い物に出かけたわけでもないのに、なんとなく寂しい気分になった。

 

全国各地でアーケードが相次いで撤去されている。理由は維持費の負担に商店会が耐えられなくなったことが一番大きいという。そもそも、アーケードは高度成長時代に商店会が各商店に資金を負担してもらって建築した。当時は儲かっていたから「雨の日も○△商店街でお買い物」の宣伝効果に期待したのだ。ところが、車社会になるにつれ「雨の日は郊外のショッピングモールでお買い物」へと変わり、アーケードは危険で景観を害するだけの厄介者となっていったのである。また、行政も昭和30年に消防庁、建設省、警察庁が連名で「アーケードの設置基準」を出してアーケードの設置そのものを規制し、現在に至っている。

 

私は地方都市で商業地の鑑定評価するときには、その街で一番の繁華街をぶらぶら歩くことにしている。シャッター通りとなってしまった商店街が多いなかで、活気のある商店街もある。たとえば、松山市の「銀天街」と「大街道」のアーケード街や仙台市の「中央通り」と「一番町」のアーケード街は平日でも多くの人で賑わっている。

 

この二つの都市に共通するのはいずれも道幅6m~8mほどの天蓋型のアーケードとなっていて、全天候型の歩行者天国であること、そして鉄道の駅と従来の商業中心地とを連続的に結んでいることだ。しかも、その距離は1km~2kmで、お散歩にちょうど良いし、飲食、雑貨、ファッション、デパート、地元の老舗、東京資本のチェーン店など店もバラエティーに富んでいる。

 

不動産鑑定評価ではこのような街を「回遊性」に優れているといい、「繁華性」とは一味違う商業地の価格形成要因として捉えている。ぐるぐる歩き回れる商業地は楽しいものだ。渋谷や下北沢は買い物をしない若者達にとっても遊園地なのだろう。

 

一方、中小企業庁がとりまとめた「商店街実態調査報告書」によれば、商店街のシャッター通り化が進むのは、店を閉めてしまった建物所有者にそもそも他人に貸し出す意思がないことや意思があっても家賃を下げることをしないで空き店舗を放置しているケースが少なくないからだという。

 

商店街活性化の特効薬はなかなか見つからないのが実情だが、アーケードを見直してみるのも一つの方策かもしれない。

 

鑑定法人エイ・スクエア

不動産鑑定士 菅原 健

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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