先日京都へ行ったのですが、京都駅はもちろん、地下鉄やバスの車内でも、外国人観光客の多さに改めて驚かされました。昼食に立ち寄った牛丼チェーン店でさえ、客の半分以上は外国人と見受けられました。市内の宿泊施設は年を追うごとに増え、京都市中心部の商業地では地価が堅調に上昇し続けています。2026年の地価公示では引き続き商業地の伸びが目立ち、京都府全域で前年比7.9%、京都市域で前年比10.1%の上昇となりました。その要因は主として円安と訪日客回復による宿泊・飲食需要の集中によるものですが、実需に裏打ちされた形で、地価は「静かに、しかし確実に」押し上げられていると言えるでしょう。

その後、奈良の法隆寺周辺に足を延ばしたのですが、空気は一変し、日本初の世界文化遺産にもかかわらず、境内にいる外国人観光客の姿は3~4組が点在する程度でした。奈良県全体ではインバウンドが回復していますが、その多くは日帰り客で、奈良公園周辺に集中する傾向があるとのことです。法隆寺エリアは、交通の便や観光動線の事情から「周遊の途中で立ち寄りにくい」場所となっており、結果として観光消費が広がりにくい状況が続いています。
こうした観光状況の違いは、地価にもはっきりと表れています。2026年の公示地価を見ると、奈良県の平均変動率はほぼ横ばい、商業地も微増にとどまり、京都府や大阪府との温度差は依然として大きいままです。法隆寺周辺の住宅地や商業地では、歴史的景観の保全という制約もあり、ホテルや大規模商業施設の開発が進みにくい現実があります。そのため地価は、「守られている」とも評価できますが、「伸び悩んでいる」と受け止められる場面もあります。
興味深いのは、地価が観光資源そのものの「格」ではなく、滞在時間や消費密度に強く反応している点です。京都は過密という副作用を抱えながらも、高い稼働率と消費単価によって土地価格が支えられています。一方の奈良・法隆寺は、比類ない歴史的価値を持ちながらも、その静けさと引き換えに、市場の熱を受け取りにくい立場に置かれています。
近年の地価動向は、インバウンドが「どこに滞在し、どこでお金を使ったか」を如実に映す鏡であるように思います。観光客の分散が課題として語られる今、法隆寺の静けさそのものが新たな価値として評価される日が来るのか。地価はその問いに対する社会の答えを示すようになるのでしょうか。
株式会社不動産経営ジャーナル「週刊不動産経営」より転載(許諾済)

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