今年は、日本の戦争終結から80年の節目に当り、いろいろな行事のほか有識者と称する人達のコメントが多く聞かれますが、8月14日に亡くなられた裏千家千玄室(享年102歳)さんのコメントは学徒出陣で特攻隊員の一人として多くの友人を送り出す時に「呈茶」したことを述べられ、生きながらえた自分は「和」の精神、「和敬静寂」のもと、世界に「お茶で平和を唱えて来ました」と淡々と話されていました。惜しまれてなりません。

ある講演会で司法書士の先生は、人生100年、終活とは人生の後半戦をどう生きてゆくかを決めることだと指摘して、40歳、50歳台から人生の後半戦をどの様に生きていきたいかと、ワクワクしながら具体的に備えていくことだと説明されています。人生80年の終活は「ながらえばまたこのごろやしのばれん憂しと見し世ぞ今は恋しき」(藤原清輔)という歌が身にしみる年と言えますが、しかし生きている限り、生き甲斐をみつけて生き抜いていくことですと三浦朱門(故人)が著書「人生は50歳から」で述べています。
他方、私達の生活基盤である戸建住宅およびマンション価格は東京23区で過去最高水準となりましたが、ペンシル住宅およびストックマンションが著しく増加し、「住まいの劣化」が顕著となり、言わば「住まいの終活問題」が叫ばれ始めました。「高経年マンション」築40年超のマンションが400万戸超となってきましたが、多くのマンションで老朽化、劣化による課題、すなわち「物理的劣化」「機能的劣化」「社会的劣化」という建物の「3つの劣化」によりマンションの寿命、終活が大きな問題となってきています。この課題は、第1に「建替えの可能性、ボリュームチェック」、第2に「改修工事の可能性チェック」、第3に「資金的な可能性チェック」を中心として「マンションライフの終活」を検討することになると思われます。例えばマンション事業等で国内トップ水準にある「HKグループ」の支援で検討するケースが見込まれます。いずれにしても、私達の「人生の終活」と生活基盤である「住まいの終活」が連動していることに間違いはなさそうです。
不動産の鑑定評価にあたり、「住まいの終活」問題はこれからも避けて通れないものと思われます。
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