今年のGWは天候に恵まれたこともあり、東京は大勢の人で賑わっていました。気候が良かったこともあり、築地と並んで東京を代表する観光地である浅草に約1年ぶりに行ってみました。
予想通り、浅草は外国人のみならず、日本人も多く、人で溢れかえっており、飲食店は軒並み、大行列・満席、外国人観光客に何度もぶつかるなど、観光を楽しむにはほど遠い状況でした。
せっかく、浅草まで来たので、映画が空前の大ヒットとなった人気アニメ、今年の大河ドラマの舞台となっている「吉原」を訪問することとしました。

大河ドラマの視聴者に加え、アニメ人気を背景とした外国人観光客の人出が多いだろうと考え、訪問したのですが、蔦屋重三郎が新吉原の大門前に開業した「耕書堂」を模した施設「江戸新吉原耕書堂」、「吉原神社」には、明らかに大河ドラマの視聴者と思われる日本人がそれぞれ十数人程度いるに過ぎず、外国人は女性2人組を一度見たのみと拍子抜けでした。
人気アニメの舞台、いわゆる「聖地」には、外国人観光客が押し寄せています。彼らにとって最も有名な「聖地」は、人気バスケアニメで有名になった江ノ電「鎌倉高校前」駅の踏切(鎌倉高校前1号踏切)でしょう。住民と通学する高校生以外の利用はほとんどなかった駅が、今では、日中、アジア系外国人の若者のみならず、その親世代までともに乗降しており、令和5年度には、同駅の乗降客数は江ノ電15駅中6番目となっています。
一方、世界的な人気を誇るアニメの舞台となった「吉原」では、外国人観光客はほとんど見られず、地元商業者等へのヒアリングでは、「吉原」周辺の外国人観光客は、主として簡易宿泊所での長期滞在であり、「吉原」観光が目的ではないとのことでした。
それでは、なぜ、あれだけの人気を誇る「聖地」に、外国人観光客が訪問しないのでしょうか。
それは、SNS「映え」しない、つまりアニメの世界観を想起できないからではないでしょうか。
残念ながら、現在の「吉原」には「花魁道中」を想起させる場所は見当たりません。また、吉原の徒歩圏内には、有名なボクシング漫画の舞台となった泪橋がありますが、現在はその名前を交差点、バス停留所に残すにとどまり、漫画の世界観を想起させてくれる場所ではありません。区道(土手通り)の歩道上には、主人公の像がありましたが、日本人のご夫婦が1組いたのみでした。
町おこしの一環として、アニメ・大河ドラマの聖地化の試みが各地でなされていますが、外国人観光客を呼び込むには、その舞台となった場所を訪れた際、観光客がその世界観に浸れる、すなわち「映え」の仕掛けが必要なのではないでしょうか。
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