■ 事例の概要
本件は、有名観光地に所在するホテルを対象とする賃料評価案件です。対象不動産は観光需要を基礎とした事業用不動産です。賃借人はホテルオペレーターであり、長期賃貸借契約(固定賃料)に基づき営業を行っていました。
■ 背景事情
コロナ禍の影響により宿泊需要は大幅に減少し、ホテル収益は著しく悪化しました。
これにより、
・賃料負担と営業収益との不均衡
・契約条件の経済合理性
・事業持続可能性
が主要な争点となりました。
当初は調停手続により解決が図られましたが、合意には至らず、最終的に訴訟へと発展しました。
■ 当社の役割
当社は、当該訴訟に関連して継続賃料鑑定評価を受託しました。
評価にあたっては、ホテルオペレーターや訴訟代理人弁護士との綿密な連携のもと、対象不動産の経済的実態を分析しました。
■ 評価上の主要論点
本件では、通常の賃料評価に加え、「当該地域におけるホテル市場の構造分析」が不可欠となりました。具体的には、宿泊需要の分析及びホテル供給の実態分析の双方を検討対象としました。
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■ 市場分析の考え方
ホテルの収益性は、需要要因のみならず供給要因によっても大きく影響を受けます。
本件では、
【宿泊需要の分析】
・観光客動向
・地域需要の変動
・稼働率・単価水準
・将来需要予測
に加え、
【ホテル供給の実態分析】
・新規供給の状況
・競合施設の増減
・客室供給量
・市場競争環境
を総合的に検討しました。
これにより、単に地価や利回り水準の変化だけでなく、当初契約時からの「市場均衡の変化」を評価基礎として位置付けました。
■ 採用した評価手法
本件では、継続賃料において採用されている差額配分法、利回り法、スライド法に加えて不動産鑑定評価基準に規定されている「収益分析法」を活用しました。
収益分析法は、 不動産収益ではなく事業収益構造を基礎として賃料の経済合理性を検証する手法です。
本件では、
・需要要因
・供給要因
・営業収支構造
・費用負担構造
を統合的に分析しました。
■ 評価結果および結論
市場環境の変動および事業収益構造の検証結果を踏まえ、契約賃料水準の調整が合理的であるとの評価結論に至り、本件紛争の解決に寄与しました。
■ 本件の特徴
本件は、
・観光依存型アセット
・需要・供給の構造分析
・訴訟対応評価
・高度な収益分析
を伴う難易度の高い案件でした。当社は、市場分析と評価理論を統合し、実務的解決に資する鑑定評価を提供しました。
