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黒田長政家臣ゆかりの「飯田屋敷の大銀杏」 - プラス不動産鑑定/岩隈 良弘

 

福岡県が発表した県内の基準地価(7月1日)によると、景況感の改善傾向を反映して県内の202地点で上昇し、福岡市では住宅地、商業地とも上昇して5年ぶりのプラスに転じています。とりわけ、都心部の中央区及び博多区は大きく上昇しており、そのような中、本年11月に中央区大名にある「日本たばこ産業・JT福岡ビル」(1980年築)の土地・建物(約3千㎡)の入札が行われました。新聞報道に依ると、最低落札額は約36億円でしたが、予想を大幅に上回る50億円程度で大和ハウス工業が落札したとのことです。同ビルは西鉄グランドホテルに近く、福岡中央銀行本店の隣に立地する事務所ビルですが、敷地の南西角に「飯田屋敷の大銀杏」があります。福岡市はNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で盛り上がっていますが、JT福岡ビルは、その敷地内に「福岡市の歴史(HP)」にも登場する「飯田屋敷の大銀杏」がある著名な土地なのです。

 

26.12 飯田屋敷 大銀杏

福岡市の保存樹木に指定されているこの木は、「軍師官兵衛」の跡取りで初代藩主黒田長政の家臣、飯田覚兵衛により移植された樹齢約400年の大樹です。ただ、近年は樹勢が衰えて倒壊の危険もあるため、100年後に巨樹に育つ事を目指した再生事業が行われています。この様な歴史的価値ある樹木は、ビル等を含む不動産の価値にどの様な影響を及ぼすのでしょうか? 現存するビルは、社屋を後退させ、正面の「明治通り」に対して約30度斜めに建設されました。その意味では、建物の形状や床面積に影響を与える「障害物」といえ、減価要因として捉えるのが一般的です。建築コストも高騰しますし、今後100年以上に亘り再生事業に係る相応の維持コストが必要となってきます。

 

入札に際しては、保存樹であるこの大銀杏の維持管理が必要との条件が示されたとのことですが、福岡・博多の重要な文化財の一つであることから、落札した大和ハウス工業は、コスト以上の「価値」を見出されたのではないでしょうか? マンション用地として開発予定とのことですが、この樹木があることで高い分譲価格が見込める訳では無いでしょう。しかし、そこに住まう人、事業を営む人にとっての誇りとなるはずですし、様々な費用を大きく超えた社会的評価が与えられるものと思っています。その様な歴史的価値を有する資産には、「保有価値」として減価を大きく超えた増加要因が生まれるのではないでしょうか。樹木の再生を通じて地域に貢献し、社会に貢献し、歴史的価値の維持に貢献したと評価する声が無くなることはありません。

 

プラス不動産鑑定

不動産鑑定士 岩隈 良弘

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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