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増える「もったいない不動産」 - 鑑定法人エイ・スクエア/菅原健

2018年12月に埼玉県深谷市の閉校となった小学校の体育館とその敷地約1,500㎡の一般競争入札が行われ、なんとマイナス795万円で落札された。

 

2019年3月には北海道室蘭市の旧福祉センターとその敷地約5,600㎡がマイナス881万円で落札された。いずれも買主による建物解体が条件であり、建物解体費用が土地の価値を上回っていたからである。

 

増える「もったいない不動産」

大都市の商業地の価格が毎年上昇を続けている一方で、「ただ」でも貰い手のない不動産が増えている。この現象はまず、リゾートマンションから始まった。高額な管理費、固定資産税等を考えると維持が難しいいためだ。

 

次に親から相続した地方の住宅に及び、今では温泉地の老朽化したホテル、地方小都市の商業ビルや賃貸マンションなど、ほとんど収益を生まない不動産にも見られるようになってきた。

 

不動産鑑定評価では既存の建物を利用するニーズがほとんどなく、建物を解体して更地化したほうが経済合理性に適うと判断される不動産については、更地価格から建物解体費用等を差し引いた価格として評価する。ところが、昨今この解体費用が高騰している。人件費の高騰に加えて残材の処理費用なども値上がりし、RC造の建物では坪当たり10万円を超えることもザラである。アスベストが含有されている場合はさらに高額となる。

 

たとえば敷地面積の1.5倍の延床面積のRC造の建物が建っている場合、単純計算で土地価格が坪当たり15万円を超えないと全体でプラス評価にならないのである。

 

また、プラス評価となったとして、建物が築後40年、50年と経過している場合は「もう使えない」と考えるのも分かるが、築20年、30年のまだまだ使える不動産についても建物解体条件付きの取引が散見される。その背景に「瑕疵担保責任」(新民法では「契約不適合責任」)の問題がある。

 

売主の瑕疵担保責任は特約で排除できるのが原則だが、売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合は中古建物であっても引き渡しから最低2年間は責任を負わなければならない。これを回避するためには宅建業者に売るか建物解体条件で売るしか方法はないのである。

 

中古自動車であれば、解体して部品を途上国に輸出する道もあるが、建物の場合はせいぜい鉄材の価格にしかならない。もったいない話だ。

 

地方の人口が減少する中で、ネット商取引、テレワークの普及等が進むと「リアル店舗」「リアル事務所」への需要は減少してゆく。このまま手をこまねいていると、マイナス評価の「負動産」は増え続け、地方の崩壊に繋がってしまう。税制や法整備など早急な対策が望まれる。

 

鑑定法人エイ・スクエア

不動産鑑定士 菅原 健

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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