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地方活性化へ向けた空き家対策 - 田中不動産鑑定/田中計機

 

人口減少時代を迎え、特に地方においては空き家問題が深刻さを増している。一旦田舎を離れた若者は、親が亡くなっても都会での生活を継続し、生まれ育った家は老朽化し空き家になるケースが多く見られる。高齢世帯の病院や施設への入所も一つの契機となっている。

 

東京、大阪といった利便性に優れた都市圏においては、空き家を処分することは可能であろうが、地方は需要が乏しく簡単には処分できない。長期間放置されることになれば、周辺の居住環境にも悪影響を及ぼす。そこで、地域の居住環境の保全や住民の財産保護等の観点から、平成27年5月に「空き家対策特別措置法」が完全施行された。これにより、市町村が行う空き家対策に法的根拠が与えられ、「特定空き家」に該当する空き家については行政代執行で撤去できることになった。また、固定資産税の課税標準の特例措置が除外されるなど、空き家として存置しておくことの意味も薄れたが、それでも全国の空き家は増加している。

 

このような流れは不動産市場にどのような影響を及ぼすのだろうか。地方の地価は、人口減少や少子高齢化の進展により、下落傾向が継続している。不動産に対する需要が限定的な中で、空き家が増加すれば、需要と供給のバランスから言っても、地価は負のスパイラルに陥ってしまい、回復は望めないことになる。

 

こうした状況下、ここ1~2年の間、各地の自治体では、「空き家の適正管理及び利活用の促進に関する条例」を制定したり、「空き家等対策審議会」を立ち上げ、各種対策に積極的に取り組むところが増えている。例えば、筆者の住む兵庫県の中東部に位置する丹波地域は、空き家率が16.2%(平成25年)と高く、過去15年間でほぼ倍増している。

 

丹波市では全国的にも先行して「空き家等対策計画」を策定しているが、これは審議会から提言を受けて方向性や具体的な取組みを明らかにして方針としたものである。審議会では、市内の問題化した空き家の現地視察を行って現状を把握したうえで、空き家の利活用や都心部から移住者を受け入れのための方策について議論を重ね、さらには市独自の補助金制度の導入まで議論を巡らせた。こうした提言が地域コミュニティの中での空き家の活用方法や、都心部から人を呼び込むための魅力的な施策に結実すれば、衰退傾向にある地方の活性化につながる。地価下落に歯止めがかからない状況下、空き家対策特別措置法の施行をきっかけにして、都市部、地方を問わず、不動産業務従事者は連携して空き家の利活用に向けた流通促進への取り組みを真剣に考えていきたいものだ。

 

田中不動産鑑定

不動産鑑定士 田中 計機

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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