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バブル崩壊の現場にて - 森島不動産コンサルタンツ/森島義博

 

私が金融機関に勤務していたころ、20世紀最後のバブル時代の話である。

 

1985年のプラザ合意によって大幅な円高容認が行われ、円の為替相場は短期間に急伸した。その結果、米国債などのドル建て資産に含み損が発生し、資金が為替リスクのない日本国内へ環流した。
一方、国内では円高による打撃を受けた輸出業界を救済するため、大幅な金融緩和が実施された。これにより、国内では資金が過剰に供給されて投資熱が加熱、特に株と不動産への投資が盛んになった。なかでも、土地神話を背景に地価は高騰し、個人も法人も不動産投機に走って転売を繰り返し、銀行は土地を担保にした融資拡大競争に狂奔した。

 

そのうちに、地上げなどに暴力団関係者が介入して社会問題になったり、NHKが5夜連続で「地価は半分にすべきだ」と言う特集を放送したりした。そんな矢先の1990年に大蔵省(当時)から突然「総す量規制」が通達された。銀行では不動産業へのプロジェクト融資が許可されなくなった。進行中の多くの不動産プロジェクトがストップし、不動産業者の多くが苦境に陥った。金利は毎週のように上がった。毎月末、金利も入らない会社が増えていった。地価は下がり、資金回収と増し担保の交渉を毎日のように行った。仕事は深夜まで続き、翌日は早朝から出勤、前夜のタバコの煙がまだ漂っているような状態であった。

 

そして、取引先の会社へ行くと知らない人が応対するようになる。「銀行との交渉を任された。」と言う。いわゆる整理屋の登場である。担保物件も次々に暴力団関係者に占拠され、事情を確認に行くと木刀で追い返された。怖い思いをずいぶんした。謄本には怪しげな抵当権がベタベタと付いている。建築中の建物も同様で、建設会社は鉄板で建物を囲い、法的処置も施していた。もうどうしようもない状態である。

 

現場の人間として、国や銀行のやり方に我慢できない気持ちもあった。後に国会に参考人召致された有名なビル保有会社の社長が、「国や銀行からあのようなやり方をされたら、どんなに優秀な経営者でもやってゆけなくなる!」と叫んだ言葉に、そっと頷いたものである。

 

不動産価格は50%以上下落し、債権回収は実質不可能となった。金融機関では生き残りをかけて社員の大規模リストラや賃金の大幅カット、合併などが行われた。銀行員も傷ついた。

 

バブル期における銀行の不見識と、政府・日銀による拙速で強引なバブル潰し策は、その後の日本に大きな禍根を残した。

 

そして今、大幅な金融緩和が続いているが・・・。

 

森島不動産コンサルタンツ

不動産鑑定士 森島 義博

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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