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「信託」ブレイクの予感 - 鑑定法人エイ・スクエア/澁井和夫

 

超高齢社会の到来で、判断能力、意思能力の衰えた高齢者の財産の適正な管理運用と承継が社会的な問題としてクローズアップされてきた。「信託」はそれを行う場合の一つの有力な手段である。自らの資産管理ができなくなってしまうおそれのある高齢者が、その資産を息子などの親族に「信託」して管理運用を任せる方法である。ただし、管理運用により生じる成果は自ら受け取ることにすることができる。賃貸用不動産などの管理運用は息子に任せ、その成果は自らが受け取って、老後の生活費、療養費などに充てるしくみである。

 

20150820

「信託」の特徴は所有権が移転するところにある。高齢者とその息子の間で信託契約を締結すると、信託される不動産の名義は息子に移転される。息子は不動産の所有名義人として、信託不動産の管理運用を執行する。自分の財産を信託して名義を息子に移した高齢者である親を「信託委託者」、信託不動産を引き受けて所有名義人となった息子を「信託受託者」と言い、信託不動産から得られる収益を受け取り、信託期間が終了したとき、その不動産の所有を引き継ぐ者を「信託受益者」と言う。高齢者は「信託委託者兼受益者」として、息子に賃貸用不動産の管理運用を任せながら、その収益を受け取るのである。

 

信託をすると、その後の信託不動産の管理運用は信託受託者が自らの名義で当事者として執行できるので、仮に委託者兼受益者である親の意思能力、判断能力が著しく衰えてしまっても、管理運用には全く支障が生じない。信託不動産に関する賃貸借契約、リフォーム等の請負契約、その資金を借り入れる契約など、判断能力、意思能力がある受託者である息子が契約当事者として執行できる。

 

一方で、国税当局は、信託不動産の実質的な所有者は信託受益者であるとみなしている。信託不動産から得られる収益は信託受益者である高齢の親の不動産所得とされ、親が確定申告をして所得税を納税する。また、信託不動産は信託受益者である高齢者の財産として相続税が課せられる。信託不動産の管理運用のために生じた借入れなどの負債も受益者である親の負債となる。つまり、息子が高齢の親に代わって不動産を管理運用しながら、親の不動産の相続、承継計画に必要な措置を親の存命中に実行できるわけである。したがって、家族や身内にこうした受託者がいるなら「家族信託」ほど使い易い仕組みはないと言える。筆者は新日本法規出版から「ケーススタディにみる専門家のための家族信託の手引」を執筆したので、詳細についてご興味のある方はご参照願いたい。

 

鑑定法人エイ・スクエア

顧問・不動産鑑定士 澁井 和夫

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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