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Only Yesterdayの収益還元法 - 高瀬不動産鑑定事務所/高瀬博司

 

投資ビルの鑑定評価を収益還元法の手法で行うことは今や常識中の常識である。しかし、これが鑑定の常識になったのはついこの間Only Yesterday、即ちバブル崩壊以降のことである。それまでは、投資ビルの評価の手法はと言えば、原価法または取引事例比較法、とりわけ取引事例比較法であった。「不動産鑑定評価基準」には、これらに収益還元法を加えた三手法を併用せよとあるが、一人「収益還元法」のみが刺身の端扱いにされていた。

 

バブルの崩壊は従来の不動産の需給関係を一変させた。稀少性ありとされていた不動産が過剰になり、そのため不動産の価格の決定権者が従来の所有者(供給者)から需要者に変ったのである。新しい需要者の諸々の要請に応える評価手法はどうしても収益還元法でなければならなかった。何故なら、この手法のみが以下のような需要に応えることができるし、新しいシステムを利用することができるからである。

(1)新しい需要者の価格決定の理論は投資採算理論である。それはNPV法(正味現在価値法)の理論であり、IRR法(内部利益率法)などの理論であるから、純収益の把握が前提である。これが可能な評価方法は、収益還元法を措いて他にない。

(2)投資には多額の資金が必要である。その資金集めの一つの方法が銀行借入であり、投資証券等による資金調達である。当時、金融監督庁は、投資物件の担保評価は収益還元法によるべしと銀行に釘を刺した(金融検査マニュアル)。また、当時の大蔵省は、REIT等の新しい不動産投資証券のシステムを構築し、新しい不動産投資の道を開いた上でそれら投資証券の評価法を収益還元法によるべしとした。

(3)ビル投資に重要なのは賃料の長期安定である。法務省は借地借家法を改正して、定期借地法、定期建物賃借権の制度を改正又は創設し、賃料収益の安定化と投資物件評価の確実性を担保しようとしている。

 

以上の例示のように、バブル崩壊後、オフィスビル等の収益物件の評価は、収益還元法という評価方法を得て、より確実性を取り戻しつつある。しかし、不動産の価格は、需要と供給の均衡するところに決まる。その均衡点は、市場如何で供給者側にも振れることがある。収益還元法万歳!とばかりは言っておれない生き物であることには十分留意して投資しなければならない。

 

なお、収益還元法を計算問題でマスターしたい方のために、「不動産投資における収益還元法の実務」を㈱プログレスから出版したので、興味のある方は投資判断に役立てて欲しい。

 

高瀬不動産鑑定事務所

不動産鑑定士 高瀬 博司

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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