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緊急輸送道路沿道建築物の耐震化-森島不動産コンサルタンツ/森島義博

 

「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」(以下、「この条例」という)は、かなり異例な条例である。なにしろ、今まで完全に合法であった建築物について、従来行われてきたような一般的な普及啓発や努力義務に終わらせることなく、耐震化に向かって新たな義務を課し、東京都として直接的な働きかけを行うのであるから。

 

この条例は、平成23年3月11日に東京都議会にて決議された。そしてその1時間後に東日本大震災が起こったのである。そのとき議場には多くの議員が大地震の揺れの不安に耐えていた。我々は、震源地から200キロも離れた新宿の超高層ビルが、中長期振動によってしなるように揺れる動画を見て驚愕すると同時に、耐震構造の超高層建築物は大きな地震でも崩れないという伝説を初めて現実のものとして確認したのである。1年以上前から検討され準備されていたこの条例は、震災から1週間後の3月18日に公布され、4月1日から施行された

 

この条例の対象は、都が定めた「緊急輸送道路」(総延長約2千km)のうち、「特定緊急輸送道路」(同約1千km:中央環状線、湾岸道路、中央自動車道、京葉道路、圏央道など)に接面している建物で、倒壊すると道路を塞いでしまう「高さ」を持つ建物(特定沿道建築物)約5000棟である。この条例による耐震診断は「義務」であり、その費用は全額補助される。(平成23年度~25年度)診断結果の悪いビルは耐震補強工事を行うことが努力義務(目標耐震性能はIs値0.6)となり、工事費用の補助がある。(地域によって金額は異なる)東京都は、対象先に対し補強工事を行うべしとの文書を発送し、「耐震診断・耐震改修マーク表示制度」の内容を強化し、ビル名の公表も行う。最終的には都の職員がビルオーナーを個別に訪問し、説得するとの覚悟を持っている。

 

大震災などの災害が起こった時にまず必要となるのが、重機や救急車などを通すための道路であることは東日本大震災直後の状況を見ても明白である。緊急輸送道路に接面する建物が一棟でも道路を塞いでしまうと、救助や復旧作業は大幅に遅れ、犠牲者も増加する。今まであまり本気にしていなかった「今後30年以内に東海地震を中心とする大地震が70~80%の確率で起こる」という話が現実味を帯びてきた昨今、建物の耐震化は、条例いかんによらず、ビルオーナーに対する強い社会的要請となってくるであろう。(明海大学不動産学部客員教授)

 

森島不動産コンサルタンツ

不動産鑑定士 森島 義博

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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