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認知症対策としての家族信託 - 長嶋不動産鑑定事務所/土師一弘

 

認知症患者が保有する金融資産は全国で約200兆円といわれ、不動産はそれ以上の額と考えられます。認知症になると資産運用の意思表示が困難となり、社会にお金が回らなくなるため、その経済的損失は計り知れないものになります。高齢化が進む中、この問題の解決は喫緊の課題となっています。家族信託は認知症対策としてだけでなく、相続や事業承継等に関して発生する様々な問題を解決する手段として有効です。私の住んでいる地方においても、近年は家族信託を活用する例がみられるようになりました。

 

認知症対策としての家族信託

「信託」とは、「自分の大切な財産を信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って大切な人や自分のために管理・運用等をしてもらう」制度です。信託には、委託者、受託者、受益者という3人が登場します。委託者は「財産を託す人」です。受託者は「託された財産を管理・運用・処分する人」で、信託のメインプレイヤーです。受益者は「信託による管理、運用、処分等の利益を得る人」です。2回連載する本テーマにつき、今回は認知症対策を例に家族信託の利用法を説明したいと思います。

 

(1)相談内容
自宅とアパート並びに現金を所有する相談者A(母・85才)がいます。Aの夫は既に他界し、一人息子のB(55才)がいます。Aは自分でアパートの管理を行っていますが、認知症の発症リスクを考慮すると、アパートの管理等をBに任せたいと考えています。

 

(2)何もしなかった場合
Aが認知症になり判断能力を喪失した場合、アパートの管理、大規模修繕、建替、売却等ができなくなります。また、本人の財産を守るためAの銀行口座は凍結され、必要最小限の預金引き出しであっても成年後見人をたてる等の手立てが必要になります。

 

(3)後見制度を使った場合
Aに資産があるため、通常、Bは成年後見人になれず、弁護士、司法書士等の専門家が成年後見人になります。この場合、不動産の現状維持のための支出しか認められず、アパー卜の建替え・大規模修繕・売却等をすることができなくなる可能性が極めて高くなります。任意後見制度を利用し、Bが任意後見人になったとしても、任意後見の発効後、任意後見監督人が選任される可能性が高いため、結果はほぼ同じです。

 

(4)家族信託を使った場合
自宅・アパート・現金を信託財産、Aを委託者、Bを受託者、そしてAが利益を受け取れるように、受益者をAとする信託契約を締結します。これにより、Aが認知症になったとしても、受託者Bが財産の管理・運用・処分等を継続して行えるため、柔軟かつ積極的な財産管理が可能となります。(以下、次回)

 

長嶋不動産鑑定事務所

不動産鑑定士 土師 一弘

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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