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ふるさと福島県を憂う – 中央鑑定法人/田崎 建一

 

2011年3月11日2時40分すぎ大地震発生。郡山市さくら通りの二階建ECビルは揺れに揺れた。背の高いキュリヤケースが倒れた。

あわてて外に出る。

すでに相当数多くの人々が道路、駐車場にしゃがみ込んでいる。

地面も縦に横に揺れた。向かいの建物が崩れ落ちた。

 

漸く揺れが落ち着いてから、さくら通りを西に向かうと郡山市役所本庁舎の窓ガラスが粉々に割れ、塔屋が壊れ傾いている。使用不能だろう。東の郡山中心市街地はそれよりもすごい惨状だ。
大地震は1964年の新潟地震、1978年の宮城県沖地震を経験しているが、それとは全然違うタイプの地震、恐ろしい地震だ。

 

ふるさと福島県を憂う

夕方、家に向かった。窓ガラスの多い、築30年、耐震基準不適合の木造二階建住宅である。心配していた窓は壊れていない。塀も倒れていなかった。家の中に入ると思ったより家財が散乱していない。家具はずれていたが、多少の食器が割れているだけだった。

「地盤だ」と直感した。地盤の優劣が、地震被害の大きさを決めるのだ。郡山中心市街地の容積率は600%、自宅のある郡山市桑野5丁目は200%、果たして容積率等の建築基準法は地盤を考慮して決められているのであろうか。

 

散乱した家財道具をかたずけて、ニュースを見る。津波のすごさを映し出している。映画を見ているようだ。これが現実だとは思えない。

次つぎと津波情報が入ってくる。数万人が波に飲み込まれているだろう。浜通りの原発が心配だと思った。

翌日、いつもどおりに会社に行き、散乱した書類、事務備品等の整理に取り掛かった。携帯は相当かかりにくかったが、社員、友人から様々な情報が入ってくる。ほとんど原発の情報である。しかし、確かな情報は少なかった。ECビルには、報道通信社がテナントとして入っている。支社長が放射能測定器を持っていた。これはすごいと思った。最高の情報原である。まだそれ程心配はないとのこと。

 

それで多少はゆとりが出来たので、ECビルの修理に取り掛かった。元請けのゼネコン、工務店に連絡したが、忙しくてなかなか来てくれない。止むを得ない事だ。そこで、知り合いのペンキ屋と看板屋に応援を頼んだ。これがうまくいった。なかなか器用なペンキ屋さんでペンキ塗りだけでなくタイルの補修、そのほか細かい修理などナンデモこなしてくれた。看板屋さんもすごい。4m2もある大きなガラスが壊れたが、そこにアルミ版をはめ込んだ。立派な出来栄えである。二階建てだからできる離れ技、高層の建物ではできないだろう。

 

3月14日、社員が近くの郡山体育館が原発地帯の避難所になっているらしいと言ってきた。すぐに行ってみると、ガスマスクに白い防護服を着た警備員が避難してきた人々の誘導をしている。体育館のなかは沢山の人が集まっていた。話しを聞いてみると、放射能被曝の検査所になっているらしい。穏やかでは無い。

そうこうしているうちに、こんどは、まだ郡山にいるのかと言う電話が入る。国道49号線は郡山などから脱出する人々で渋滞しているという。避難してくる人、脱出する人、両方の混乱。津波の次は放射能という見えない敵との戦いが始まった。

 

3月24日、漸く磐越道が開通したので商用で会津に向かう。福島県民は磐梯山と猪苗代湖に独特の愛着を持っている。野口英世のふるさとでもある。何も変わっていないかのようである。日本人が作った高速道路は痛んでいない。原発はよその国の人が作ったのだろう。

海辺に住んでいる人の多くは、波の大きさはともかくとしても、確実に津波がくる事を予想していると思う。それでも、「ふるさと」としての土地の結縁から離れる事が出来ず、運命を伴にする。悲しいことではあるが、歴史がそれを証明している。

 

津波は天災であるが、原発事故は人災である。放射能に怯えながら運命を伴にするわけにはいかない。津波は一度去れば相当の年月の平穏が続く。しかし、放射能はこれから先平穏がくることはない。
私は、会津に生まれ、郡山で暮らしてきた福島県民である。そう簡単には「ふるさと福島県」を見捨てるわけにはいかない。

確かに木村守江元知事が原発を推進してきたことは事実である。そして、収賄罪により福島地検に逮捕され失脚した。原発に批判的であった佐藤栄左久前知事も亦、汚職事件追及により辞職し、東京地検に逮捕された。

 

東京電力の電力量の25%程度は福島原発を中心として福島県で作られている。東京都全体の大部分の電力消費量を賄っていると思われる。東京は電気の街である。地下鉄、国電、エレベータ、エスカレータ、エアコン、電灯、ポンプ、コンピュータ数えたら切りが無い。東京の使用電力の大部分は福島県産なのだ。東京は福島県があるから成り立っている街だと解って欲しい。そして、福島県民は福島原発の1ワットも使用していないことも解って欲しい。東京と福島県は相当深い結縁なのだから。

 

中央鑑定法人

不動産鑑定士  田崎 建一

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)

 


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