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「異次元価格のマンション」売れるか - 森島不動産コンサルタンツ/森島義博

経済回復の進み方が上下に開く「K字型」経済が出現している。コロナ禍でも都心の住宅は高所得者層の購買意欲が高く、値上がりが続いているようだ。そうした流れとも関連するのか、一部屋67億6千万円という新築マンションが売り出されている。

 

「異次元価格のマンション」売れるか

原宿へ徒歩5分、「明治神宮前」駅徒歩2分の好立地。総戸数14戸というかなり小規模でプライベート性の高いマンションである。最上階で専有面積は627㎡(テニスコート3面が余裕に入る)。ほかにも300㎡前後で18億円前後の部屋もある。それにしても周辺マンションの5倍以上の単価・総額には驚かされる。一般的な日本のマンション市場からはかけ離れた異次元の価格である。

 

案の定、売主は外資系の特定目的会社。特定目的会社は資産を扱うために設立される組織であり、事業会社としての実体はない。分譲事業の企画は、香港を拠点とした資産運用会社だ。作成されたパンフレットはわずか400部ともいわれる。

 

パンフレット自体、1部原価数万円はするであろうから完全なクローズ物件で、公式のホームページなどもなく、水面下で販売活動が行われている。媒介は大手不動産販売会社で、限られた層しかアクセスできない極秘物件扱いだ。そのため、建築確認看板以外では詳細をうかがい知ることができない。

 

敷地は2千410㎡あり、日銀支店長社宅の跡地である。(日銀支店長はこのような高級住宅地に高級料亭と見まちがうような家に住んでいたのである。1998年春に発覚した日銀幹部の接待汚職事件をきっかけに、さすがに「豪華すぎる」との批判を受け、32の支店長社宅は売りに出された。)場所はラフォーレ原宿の裏側の道に面しており、目立つ場所ではない。日銀支店長社宅としての〝使い方〟には大変適した場所ではある。

 

このように高額なマンションが売れるのだろうか?これまでは、三井不動産レジデンシャルが分譲した港区にある2017年竣工の「パークマンション檜町公園」が、専有面積約580㎡で約55億円というのが国内最高額のマンションだった。

 

実は世界市場を見回すと、東京のマンションは割安感がある。一般財団法人日本不動産研究所の2020年4月時点の「マンション価格指数」によると、東京のハイエンドクラスマンションの分譲単価を100とすると、香港213.4、ロンドン186.4、上海119.6、ニューヨーク101.4と東京のマンションは割安と見ることができるのである。

 

きっと、世界の富裕層の中で、日銀支店長社宅と同じような使い方をしようとする個人か法人が、このマンションを買うのだろうと私は思っている。

 
 

森島不動産コンサルタンツ

不動産鑑定士 森島 義博

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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